賃貸経営の基礎知識

第2回 遺言を残すよりも「贈与」を上手に活用して土地の有効活用を!PART1

講師:太田 美奈氏(税理士法人タクトコンサルティング)

土地の価格が低下している今、「相続時精算課税制度」による贈与を活用して相続対策を行うことがとても有効です!なぜなら・・・

今回の特集では、資産税( 相続税など)のコンサルティングや実務に特化して取り組んでいる税理士法人タクトコンサルティングの太田美奈税理士( 住友不動産 顧問税理士) に取材を行い、最新の相続税対策の手法などをお聞きしてまいりました。「相続税対策」の手法のひとつとして、まず最初に考えられることは、所有されている土地にアパートやマンションなど事業用の収益物件を建て、土地の評価を下げ、更に融資を受けることで「相続税額」自体を下げていく方法が挙げられます。この手法は、相続税対策だけではなく、現在支払っている「固定資産税」等の軽減にもつながりますので、非常に有効な手法のひとつです。

「相続」の話をする際には、避けては通れないのが「人の死」の話です。近年、医学の発展とともに、日本人の平均寿命が延びてきており、大変喜ばしいことに、90 歳を超えられても非常に元気で過ごされている方が多くなってきました。
しかし、相続人が60 歳~ 70 歳のころに上記に挙げた「相続税対策」を行っていたとすると、相続税対策の効果が薄れてくるといった現象が、皮肉な話ですが重なってきます。所有されている土地にアパートやマンションを建てることで、土地の評価額を下げることはできました。しかし償却が終わりに近づくにつれローン残高も減り、代わって収入が増えることで「現金」※が増えていれば、相続税対策をしたはずであったにもかかわらず、相続発生時には、相続税額が上がってしまうケースがあります。※現金は100%の評価額で課税されます。

なぜ? 今「相続時精算課税制度」を活用して資産承継を行う方が増えているのでしょうか?

なぜ? 今「相続時精算課税制度」を活用して資産承継を行う方が増えているのでしょうか?

リーマンショック以降の景気後退の背景の中、「相続時精算課税制度」を活用して資産を承継されるケースが非常に増加してきています。

「相続時精算課税制度」を簡単に説明します。この制度は、平成15 年に新設された税制ですが、新設当時( 平成15 年度) も現在と同様に不況下にあり、当時の内閣が、土地売買などの活性化を図ることで景気を上昇させる目的として新設されました。贈与税の課税制度には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2 つがあり、一定の要件に該当する場合には、「相続時精算課税」制度を選択することができます。この制度は、贈与時に贈与財産に対する贈与税を納め、その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行うものです。

土地を例にとってみますと、「相続時精算課税制度」を選択して土地の生前贈与を受けた場合、贈与時の土地の価格で、相続税額が課税されます。つまり土地価格が低い時期に「相続時精算課税制度」制度を選択し生前贈与を行い、相続が発生した際の土地価格が高ければ、かなりの額の相続税額を減額することができ最大限の効果が期待できます。
本年7 月に、相続や贈与を行う際に基準とする土地価格( 路線価) が国税局から発表されました。数年前までは、首都圏を中心に「ミニバブル」と称され、土地価格がかなり上昇をしていたのですが、昨今の景気後退の煽りもあり、多くの地域で大幅に下落した結果となっています。先が読めない不透明な時代ですが、土地の価格が下がっている背景の中、また、バブル期(1980 年代) に相続をご体験され大変ご苦労をされた方自身が、今では相続をする立場となっているケースも多く、この「相続時精算課税制度」により関心が寄せられています。

高齢者社会が生み出す様々な問題点。判断能力があるうちに資産承継ができる画期的な制度です。

高齢者社会が生み出す様々な問題点。判断能力があるうちに資産承継ができる画期的な制度です。

2008 年に厚生労働省から発表された日本人の平均寿命は、男性が約79 歳、女性が約86 歳と3 年連続して過去の平均寿命を更新しています。これは、大変に喜ばしいことですが、同時に様々な問題点も抱えています。例えば最近テレビのニュース等でよく特集として挙げられる「認知症」も大きな社会問題となっています。「認知症」に患われた親を持つ家族は、介護の問題など、今までの生活が一変し、金銭的な問題も含め大きな負担を背負うことになり、非常にご苦労をされることが現実です。
とくに大きな資産( アパートなどの収益物件) を抱える家族にとっては死活問題です。賃貸住宅は家賃収入などが入る反面、固定資産税や建物の維持・管理に関する修繕費用に関する出費も嵩みます。それらに伴う費用は賃貸収入の中から賄っていくのが一般的な考えですが、「認知症」を患われている所有者の方の「お金」を動かすことは簡単にはできません。同時に入居者や修繕などに関わる各種契約行為においても同様で、収益資産を活用すること自体が難しい状況になってしまいます。そのような状況に陥る前( ご所有者の判断能力が十分あるうち) に、賃貸住宅( アパートなどの建物) を「相続時精算課税制度」を活用して贈与を行うことで、お子様世代が資産をコントロールすることでき、将来に亘る資産承継の心配事を軽減させることに繋がり、積極的な「土地の有効活用」ができるようになりますので、ぜひご検討されてはいかがでしょうか。

土地活用・資産運用のことなら住友不動産にお任せください。

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